| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-053  (Poster presentation)

ケツユクサの花の性決定に関わる遺伝子発現

*宮崎祐子(岡山大学環境生命科学), 原里美(岡山大学農学部), 勝原光希(神戸大学人間発達環境), 邑上夏菜(神戸大学人間発達環境), 丑丸敦史(神戸大学人間発達環境)

雄性両全性同株における雄花は、訪花昆虫の誘因効果を高めることや、少ない資源で雄親成功を高められると考えられており、雄花をどの程度生産するかは個体の繁殖成功に影響する重要な繁殖戦略である。ケツユクサ(Commelina communis f. ciliata)では一つの花序内で最初に咲く(以後B1)花は両性花になる傾向があり、B1両性花が結実に成功すれば以降の (以後順にB2、B3) 花は雄花に、B1両性花が結実に失敗すればB2は再び両性花に、といった可塑的な性決定機構を有している。B2花が雄花になるのはB1両性花の果実の成熟のための資源分配調節が働くためとする説があるが、詳細は明らかではない。また、雄花は雌ずいが伸長せず胚珠が未熟となった花であるため、両性花/雄花の決定には雌ずいの伸長を制御する因子が関与していることが考えられるが、性決定機構は未だ解明されていない。
そこで本研究では、開花前日のB1両性花とB3雄花で発現変化している遺伝子をRNA-seqにより網羅的に解析することで、性表現決定に関わる候補遺伝子群を抽出することを目的とした。gene ontologyのbiological process(生物学的プロセス)に基づいて解析結果を整理した結果、B1両性花で発現が高くなる遺伝子群に、胚嚢における卵細胞分化に関与する遺伝子群が含まれていたことから、解析の妥当性が評価できた。また、B3雄花で発現が高くなる遺伝子群には、ブラシノステロイド代謝過程および生合成に関与する遺伝子群、二糖類(スクロースなど)に応答する遺伝子群、デンプンの代謝および異化に関与する遺伝子群、窒素飢餓に対する細胞応答に関与する遺伝子群が含まれていた。したがって、B3花の性決定(花の雄化)には植物ホルモンの作用および栄養状態が関与していることが推測された。


日本生態学会