| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-374  (Poster presentation)

山形県庄内地方におけるヒメボタルの環境選択
Habitat selection of Luciola parvula in Shonai regiom, Yamagata.

*雫田享佐, 斎藤昌幸(山形大学農学部)
*Kyosuke Shizukuda, Masayuki U. Saito(Yamagata Univ.)

ホタル類は日本人に好まれる昆虫種の一つであり、古くから鑑賞され人々に親しまれてきた。ホタル類の中でも幼虫期を陸上で過ごす陸生ホタルが近年注目を集めている。陸生ホタルの1種、ヒメボタルは一部地域では絶滅危惧種に指定されており保全活動が盛んに実施されているが、その生息環境についての科学的知見は十分でない。本研究では、ヒメボタルの生息環境を定量的に評価することを目的とした。調査は山形県鶴岡市の高館山周辺にて、地形・森林植生タイプの異なる16個の調査サイトを設定して行った。2018年6月から7月の間に各調査サイトにて成虫の発生個体数のカウントを行った。成虫の発生個体数と地形の指標であるTopographic Position Index(TPI)および森林植生タイプ(広葉樹林、マツ林、スギ林)の関係を一般化線形混合モデル(GLMM)によって解析した。さらに、幼虫期で重要とされる餌資源量(陸貝と土壌動物)の調査を2018年10月に、土壌水分量の調査を2018年6月と10月にそれぞれ行った。餌資源量と土壌水分量はTPIと森林植生タイプで説明する一般化線形モデルもしくはGLMMによって解析した。統計解析の結果、成虫の発生個体数にはTPIが影響を与えており、谷に近い環境で個体数が多くなる傾向が明らかになった。また、このような環境は、陸貝の個体数が多く、土壌水分量も高い傾向にあることが示された。すなわち、成虫が多く発生すると示された環境は、同時に幼虫の生息にも適した環境であることが示唆され、これには成虫メスと幼虫の移動能力の低さが関係している可能性が考えられた。


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