| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-390  (Poster presentation)

同所的に生息するカワニナ属2種における、遺伝構造と交雑の有無の解明
Genetic structure and presence or absence of hybridization in two sympatric spices of the genus Semisulcospira

*坂本啓伍(滋賀県立大学), 三浦収(高知大学), 浦部美佐子(滋賀県立大学), 吾妻健(高知大学)
*Keigo Sakamoto(The Univ. of Shiga Prefecture), Osamu Miura(Kochi Univ.), Misako Urabe(The Univ. of Shiga Prefecture), Takeshi Agatsuma(Kochi Univ.)

琵琶湖産カワニナ類には15種の固有種が報告されおり、同所的に数種が混棲することが普通である。これらにおいては、核遺伝子の塩基配列をヘテロに持つ個体の存在が数多く確認されている(神谷、2015)。このようなヘテロ接合型は種間交雑や祖先多型に由来すると考えられるが、カワニナ類の場合はどちらなのかはっきりしていない。本研究では、琵琶湖沿岸に同所的に生息する2種カワニナ類を対象に、核DNAのPKInt2領域の塩基配列データを用いて系統解析を行うと同時にddRAD遺伝子座の塩基配列データを用いて系統解析および構造解析を行い、琵琶湖のカワニナ類の遺伝子多型が何に由来するのか明らかにすることとした。
琵琶湖固有種のハベカワニナSemisulcospira(Biwamelania)habei(以下ハベ)と非固有種のチリメンカワニナS.(Semisulcospira)reiniana(以下チリメン)の2種を対象とし、滋賀県長浜市西浅井町大浦の大浦川河口付近にて採集を行なった。採集した個体の足組織からDNAを抽出し、PKInt2領域およびddRAD遺伝子座の塩基配列データを得た。それらのデータを用いて、系統解析および遺伝構造解析を実施した。
PKInt2領域に基づき系統樹を作成した結果、ハベとチリメンの配列が混在するクレードが形成された。一方、ddRAD遺伝子座に基づき系統樹を作成した結果、両種はそれぞれ独立したクレードを形成した。また、構造解析の結果、クラスター数はK=2が最適と指定され、ハベ個体はすべてCluster1、チリメン個体はすべてCluster2で構成されていた。
PKInt2領域に基づく系統樹では、ハベおよびチリメンのヘテロ接合個体が、同じクレードに含まれる類似した配列を持つケースが少なからず見られた。一方、ddRAD遺伝子座による系統解析および構造解析の結果においては、両種は明確に分かれ、種間交雑の存在は示唆されなかった。結論として、同所的に生息するハベおよびチリメンの両種の間で種間交雑は起きておらず、ヘテロ接合型の由来も種間交雑ではなく祖先多型であると考えられる。


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