| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-361  (Poster presentation)

琉球列島のアザミサンゴ属の局所集団遺伝構造
The local genetic structure of Galaxea coral populations in the Ryukyu Archipelago

*中島祐一, Patricia H Wepfer, 御手洗哲司(OIST)
*Yuichi Nakajima, Patricia H Wepfer, Satoshi Mitarai(OIST)

アザミサンゴはインド洋から西太平洋域の熱帯の沿岸域を中心に生息する、雌雄異体の放卵放精型サンゴであり、破片分散によりクローン群体を増やすことも可能である。琉球列島ではミトコンドリアDNAで種判別することで3タイプに分かれるが、繁殖特性と遺伝子型の関連性には不明な点が多い。本研究では種間・種内遺伝子型、生殖細胞の有無と雌雄に着目して、アザミサンゴがどのように局所個体群を維持しているかを解明することを目的とした。
琉球列島の4地点(奄美、沖縄、宮古、西表)で、GPSによるサンゴ群体の位置情報を記録しながらアザミサンゴの枝片を計289群体から採取した。沖縄では組織観察用にも枝片を採取した。開発済みの8遺伝子座と、新規に開発した7遺伝子座の計15遺伝子座のマイクロサテライトで遺伝子型を決定して、クローン群体数および近縁度を評価した。種判別にはミトコンドリアDNAのnad2-cytb間の領域をPCRしてフラグメント解析を行った。組織観察用枝片はブアン液に浸して脱灰して切片を作成して、ヘマトキシリン・エオジン染色後、顕微鏡下で生殖細胞の有無と雌雄を判別した。
奄美で採取した群体は全ての遺伝子型が互いに異なっていた。採取場所が礁斜面のため、礁池である他の3地点と異なり、破片分散しにくい、またはクローン群体が低密度になる要因があるかもしれない。クローン群体を含む3地点では距離が近いと近縁度が高い傾向にあり、破片分散により局所的に遺伝子型分布に偏りが形成されうる。沖縄で採取した群体の多くは成熟していたが、どちらの種も性比に大きな偏りが見られた。遺伝子型と性は一致していたことから、生まれつき性が決まっており性転換のように有性生殖の機会を増やす仕組みは備わっていないと考えられる。成熟群体が多い個体群でも有性生殖由来の群体は見かけより少なく、他地点への幼生供給源となっていない可能性がある。


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