| 要旨トップ | ESJ67 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S19  3月6日 9:30-12:30 Room E

階層モデリング:生態系の管理・保全におけるデータ統合と順応的観測に向けて
Hierarchical modeling: toward data integration and adaptive monitoring in ecological management and conservation

深谷肇一(国立環境研究所), 飯島勇人(森林総研)
Keiichi FUKAYA(NIES), Hayato IIJIMA(FFPRI)

 生態系の管理や保全においては、対象の系の現状評価と継続的なモニタリングに基づく方策の修正が必要である。必然的に、関連するデータを収集し、その解析結果を計画にフィードバックすることが求められるが、その実行には様々な困難が伴う。例えば、予算や実務上の制約により、標準的な統計手法で要求されるデータを収集できない場合は少なくない。知見の不足は、実効的なサンプリングデザインの事前の特定を困難にする。長期的なモニタリングにおいては、やむを得ない事情により観測の質や量にばらつきが生じやすい。
 こうした問題に対して、概念的・方法論的な解決を与えるかもしれないのが階層モデリングである。階層モデルは、種分布や個体密度など、関心はあるが直接は観測できない生態的数量を潜在変数として、生態過程と観測過程を明示的に表す部分要素を組み合わせた階層的な統計モデルである。階層モデルに基づく統計推測では、野外観測や生態動態の不確実性を踏まえた推定と予測はもとより、断片的に収集された異なる種類のデータを1つのモデルに統合したり、サンプリングの時空間的な異質性を織り込んでデータを解析したりすることを、自然かつ厳密に行うことができる。こうした特徴は、目標に向けたモニタリングデザインの設計や、その順応的な修正にも役立つと考えられる。
 そこで、本シンポジウムでは応用生態学における階層モデリングの利活用について考えたい。階層モデリングの基本的な概念を生態系の管理や保全の文脈に沿って整理するとともに、階層モデルを用いた応用研究の実例を紹介する。さらに、生態系の管理・保全の最前線で活躍されている方々からのコメントを踏まえ、外来生物や鳥獣害への対策、生物資源管理、生物多様性保全、生態系モニタリングなど、幅広い実問題に対する階層モデリングの有用性を議論したい。

コメント:
梶光一(東京農工大)
公益財団法人 日本自然保護協会

[S19-1]
生態過程と観測過程のモデル化:応用生態学のための階層モデル *深谷肇一(国立環境研究所)
Joint modeling of ecological and observation processes: hierarchical models for ecological applications *Keiichi FUKAYA(NIES)

[S19-2]
生態系の管理保全の場面における階層モデルの役割 *飯島勇人(森林総合研究所)
Role of hierarchical model in conservation and management of ecosystem *Hayato IIJIMA(FFPRI)

[S19-3]
空間明示捕獲再捕獲モデルから探る捕食者の空間動態:季節性が異なる餌2種への応答 *徳吉美国(東京大学), 岡奈理子(山階鳥類研究所), 亘悠哉(森林総合研究所), 飯島勇人(森林総合研究所), 宮下直(東京大学)
Exploring spatial dynamics of a predator using spatially explicit capture-recapture model: response to two prey species with different seasonalities *Mikuni TOKUYOSHI(Univ. of Tokyo), Nariko OKA(Yamashina Inst. Ornithology), Yuya WATARI(FFPRI), Hayato IIJIMA(FFPRI), Tadashi MIYASHITA(Univ. of Tokyo)

[S19-4]
時空間分布の階層モデル:小型浮魚類へのVASTモデルの適用例 *金森由妃, 西嶋翔太, 由上龍嗣, 渡井幹雄, 岡村寛(中央水産研究所)
Hierarchical modeling of spatio-temporal distribution: an application of Vector Autoregressive Spatio-Temporal (VAST) model to small pelagic fishes *Yuki KANAMORI, Shota NISHIJIMA, Ryuji YUKAMI, Mikio WATAI, Hiroshi OKAMURA(NRIFS, FRA)

[S19-5]
管理の実施によって学ぶ外来種防除の空間最適化 *西本誠(東京大学), 宮下直(東京大学), 横溝裕行(国立環境研究所), 松田裕之(横浜国立大学), 今津健志(千葉県生物多様性セ), 高橋洋生(自然環境研究センター), 長谷川雅美(東邦大学), 深澤圭太(国立環境研究所)
Spatial optimization of invasive species control learned by management practice *Makoto NISHIMOTO(Univ. of Tokyo), Tadashi MIYASHITA(Univ. of Tokyo), Hiroyuki YOKOMIZO(NIES), Hiroyuki MATSUDA(Yokohama Natl. Univ.), Takeshi IMAZU(Chiba Biodiv. Center), Hiroo TAKAHASHI(JWRC), Masami HASEGAWA(Toho Univ.), Keita FUKASAWA(NIES)

[S19-6]
階層モデルが駆動する研究と事業の相互作用系:奄美大島マングース防除事業を例に *深澤圭太(国立環境研究所), 川本朋慶(自然環境研究センター), 諸澤崇裕(自然環境研究センター), 松田維(自然環境研究センター), 橋本琢磨(自然環境研究センター), 阿部愼太郎(環境省)
Mongoose eradication in Amami island: an interacting system of ecological study and conservation practice driven by hierarchical models *Keita FUKASAWA(NIES), Tomonori KAWAMOTO(JWRC), Takahiro MOROSAWA(JWRC), Tamotsu MATSUDA(JWRC), Takuma HASHIMOTO(JWRC), Shintaro ABE(Ministry of the Environment)


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