| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W12-3  (Workshop)

森林の生態系サービスに対する消費者の意識:コンジョイント分析の結果について
Consumers' willingness-to-pay for forest ecosystem services: results of a conjoint analysis

*柘植隆宏(甲南大学), 大沼あゆみ(慶應義塾大学)
*Takahiro TSUGE(Konan Univ.), Ayumi ONUMA(Keio Univ.)

 各種認証に対する消費者の評価を把握することは、それらの普及に向けた検討を行ううえで重要な課題である。そこで本研究では、コンジョイント分析を用いてFSC森林認証とFSC生態系サービス認証に対する支払意思額(各種認証の付加価値)を推計した。提供する情報により消費者の評価が異なる可能性を検証するため、4種類の情報提供を行い(ver.1では生息する動物の種数に関する数値データ、ver.2では生息する生物の写真と動画、ver.3では絶滅危惧種スマトラサイの動画、ver.4では食物網のトップに位置づけられるウンピョウの写真と動画を提示)、それぞれの場合の支払意思額を比較した。
 コンジョイント分析の結果の信頼性を検証するために、ベスト・ワースト・スケーリング(BWS)を用いた分析も行った。BWSでは、回答者に木製の机を購入する状況を想定してもらい、「認証を取得していない木材」、「FSC森林認証のみを取得している木材」、「FSC森林認証に加えて、炭素排出がゼロであることで生態系サービス認証を取得している木材」、「FSC森林認証に加えて、生物多様性の減少がゼロであることで生態系サービス認証を取得している木材」、「FSC森林認証に加えて、炭素排出と生物多様性の減少の両方がゼロであることで生態系サービス認証を取得している木材」の5種類の木材を使用した机のうち、どれを購入したいと思うかを尋ねた。
 2018年10月に調査を実施し、3774件の回答を得た。コンジョイント分析の結果、提供する情報に関わらず、支払意思額は「FSC+炭素貯留と生物多様性」、「FSC+生物多様性」、「FSC+炭素貯留」、「FSC」の順に高いことが明らかとなった。一方、BWSの結果からも「FSC+炭素貯留と生物多様性」、「FSC+生物多様性」、「FSC+炭素貯留」、「FSC」、「認証なし」の順に強く好まれていることが明らかとなった。異なる手法で同様の結果が得られたことから、本研究の結果は一定の信頼性を有すると考えられる。最後に以上の結果の政策的含意を示す。


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