| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W21-1  (Workshop)

ショウジョウバエの性決定遺伝子から迫る配偶行動の種特異性を生みだす神経機構
The molecular and neural basis for species-specific mating behavior in Drosophila subobscura

*田中良弥(名古屋大学), 樋口智大(東北大学, 未来ICT研究所), 古波津創(未来ICT研究所), 栗崎健(杏林大学), 山元大輔(未来ICT研究所)
*Ryoyo TANAKA(Nagoya Univ.), Tomohiro HIGUCHI(Tohoku Univ., NICT), Soh KOHATSU(NICT), Takeshi KURISAKI(Korin Univ.), Daisuke YAMAMOTO(NICT)

昆虫の雄が雌に対して示す求愛行動は性選択や生息環境によって急速に多様化する。例えば、ショウジョウバエ属の一種であるDrosophila subobscura (D. subobscura)の雄は交尾に至るまでに吐き戻した消化管の内容物を雌に与える婚姻贈呈と呼ばれるユニークな求愛行動を示す。行動は神経系によって制御されていることから、D. subobscuraが婚姻贈呈を獲得した背景には何らかの神経機能の種間変化があると推察されるが、求愛行動の種特異性をもたらす仕組みの理解は進んでいない。モデル種であるキイロショウジョウバエにおいて、fruitlessと呼ばれる性決定遺伝子を発現する神経回路によって求愛行動が生み出されることが知られている。この知見から、ゲノム編集などの分子遺伝学的手法を駆使して、D. subobscuraの求愛行動を制御する神経回路を可視化・操作することで婚姻贈呈の獲得をもたらす神経機構を明らかにできるのではないかと考えた。本発表では、少数の神経細胞のみを可視化・操作する技術を用いた婚姻贈呈に関わる神経細胞の探索について紹介するとともに、「行動」の性差・種間差を生み出す分子・神経機構について議論したい。


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