| 要旨トップ | ESJ68 自由集会 一覧 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W14  3月20日 17:00-18:30 Room F

人間社会の感染症リスク管理における生態学の役割
Role of ecology in managing infectious disease in human society

森健介(神戸大学), 佐藤拓哉(神戸大学), 瀧本岳(東京大学)
Kensuke MORI(Kobe University), Takuya SATO(Kobe University), Gaku TAKIMOTO(University of Tokyo)

新興感染症や深刻な風土病等の多くは人獣共通感染症によって引き起こされる。過去のパンデミックの多くが野生動物群に元来存在していた病原菌が人間社会に漏れ出したもので、2020年にパンデミックを起こしたコロナウイルスも野生の蝙蝠が起源と言われている。また家畜や水産物といった経済的に重要な動物達も野生動物と共通の感染症のリスクに晒されており、アフリカ豚熱などは重大な問題をひきおこしている。これらの感染症は野生の動物群などに自然に存在しており、人体の医療や獣医学、人間社会での疫学だけでの対応には限界がある。そのため近年は医学・疫学・獣医学・生態学といった複数の分野を合わせて公衆衛生を考えるOne Healthというアプローチが注目を浴びてもいる。今後世界中で人口密度と人々の移動の増加や自然と人間社会の接し方 が変化し新興感染症のリスクが増えていくと予想される中、生態学は公衆衛生において重要な役割を担っていると考えられる。例えば生態学の手法を用いることにより自然に存在する感染症の観測や管理、リスクの高い地域の予測などが可能になる。また、どのような環境や生態系、攪乱などが感染症の広がりを抑えたり助長させたりするかといった生態学理論は今後の感染症のリスク管理 においてより重要になっていくと予想できる。そこでこの集会 ではOne Healthについての簡単な説明と感染症生態学の研究、また野生下の寄生生物多様性解明の実例をいくつか紹介し、より多くの生態学者に疫学と感染症に対し関心を持ってもらいたいと思う。

[W14-1]
One Healthアプローチとエージェント・ベース・モデルを用いたエキノコックスの研究 *森健介(神戸大学, カルガリー大学)
One Health Approach and Agent-based modelling of Echinococcus multilocularis *Kensuke MORI(Kobe University, University of Calgary)

[W14-2]
生物多様性-感染症リスク関係:ベクター媒介性感染症リスクへのベクター多様性の効果 *瀧本岳, 白川遥大(東京大学)
Biodiversity-disease relationship: effects of vector diversity on vector-borne disease risk *Gaku TAKIMOTO, Harumasa SHIRAKAWA(University of Tokyo)

[W14-3]
魚類病害虫ハダムシ(扁形動物: 単生類)の多様性とその利用宿主の解明 *新田理人(神戸大学)
Biodiversity and host utilization of capsalids parasitic on marine fishes (Mongenea) in Japan *Masato NITTA(Kobe University)


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