公募シンポジウム & フォーラム 3/29 (S6-S12)

公募シンポジウム & フォーラム一覧へ
3/28の公募シンポジウムへ
3/30の公募シンポジウムへ

S6 分子系統情報を用いた群集成立過程の解明

3/29(火) A会場 09:00 -- 12:00
企画責任者:曽田貞滋(京大・理)
系統的に近縁な生物からなる群集の成り立ちには,地形や地史に制約された個々の種の移動分散・定着とともに,生殖と資源利用をめぐる種間相互作用とそれに起因する進化的な性的隔離強化と生態ニッチの分化がかかわっている.このような群集成立にかかわる進化的過程を推定する上では,近縁種の系統関係や地理的集団の移動分散の歴史を知る必要があり,そのためにはミトコンドリアや核のDNA塩基配列の情報を基にした分子系統解析が有効である.例えば,複数種の系統地理パターンを同時に調べて,共存にいたる移動分散経路や,共存にいたるまでに起こった2次的接触の機会を推定することが可能である.ごく近縁なハプロタイプの塩基配列を用いた系統地理の解析では,統計的最節約法に基づいてネットワークを構築し,nested clade analysisを行うことによって歴史的な過程を推定することができる.さらに,共存する種間に共存の鍵となるような形質差が存在する場合,系統の情報によって,そのような差が直接相互作用によらず進化したのか,あるいは相互作用によって形質置換が起こったのかを区別することも可能である.このような研究は生物群集の進化的動態の理解を促進すると同時に,種の保全においても有用な知見を提供する.このシンポジウムでは,種間系統樹や,地理的集団を扱ったネットワーク解析による系統地理解析を取り入れた群集生態学的研究を促進することを目的として,いくつかの動物群の研究例を紹介する.

S7 集団の進化的挙動を探る−生態学と集団遺伝学の連携

3/29(火) B会場 09:00 -- 12:00
企画責任者:舘田英典(九大院・理・生物)
集団遺伝学は分子生態学における遺伝子マーカーデータの解析手段として既に広く利用されている。しかし生態学の大きな目的の一つが生物多様性創出・維持機構の解明であり、集団遺伝学はその重要な要素である遺伝的多様性の理解を目指しているので、より深いレベルでの両者つながりかたがあるはずである。特に生物の適応進化機構を解明していくには両者の連携が不可欠と言えるが、まだどのようにこれを進めていくかについて明確に方向が見えているわけではない。このシンポジウムでは、理論、植物DNA多型、遺伝子間相互作用の研究で活躍している集団遺伝学者と、生態学の重要な問題に集団遺伝学を適用している生態学者に研究成果を報告して戴き、議論を深めながら集団遺伝学と生態学を連携させる新しい方向性を探る。

S8 同所的種分化の理論的再検討と実際

3/29(火) C会場 09:00 -- 12:00
企画責任者:河田雅圭(東北大院)
 同所的種分化には生態学的要因が重要な役割を果たしていると考えられており、分断選択や性選択などによって急速に生じる。Maynard Simth 1966; Felsenstein 1981; Rice & Hostert 1993らの初期の理論的な解析により、同 所的種分化が起こりうる条件は厳しいと指摘されていたが、最近の理論的研究のいくつかは同所的種分化は比較的広い範囲の条件で起こりうると予測し注目を浴びた(Dirckmann and Doebeli 1999)。しかし、Gavrilets(2004)は、これらの理論の問題点を指摘し、同所的種分化の条件は厳しいとした。また、性選択のみによって引きおこされるという種分化のモデル(Higashi et al. 1999)に対しても、種分化が生じる条件は厳しいという批判がなされている (Arnegard and Kondrashow, 2004; Van Doorn et al. 2004)。 本シンポジウムでは、批判に対するリスポンスなどを通じて、近年の理論的問題点に対する再検討を行う。また、同所的種分化の野外での研究をアフリカのシクリッドの研究と食植性昆虫の研究を紹介し、理論との整合性を議論する。

S9 植物の光馴化の生理生態学 −個葉から個体群まで−

3/29(火) D会場 09:00 -- 12:00
企画責任者:村岡裕由(岐阜大学)・小林剛(香川大学)・種子田春彦(大阪大学)
 植物の光合成生産と成長を最も強く制限する環境要因は光である。植物にとっての光環境は,生育地(例えば林床,林冠ギャップ,草地)ごとに大きく異なる。また時間的な変動(秒〜季節)も大きい。動くことのできない植物は与えられた光環境のもとで光合成をし,成長し,繁殖しなければならない。光不足の環境では,その場所で得られる光を最大限に獲得して有効に利用する必要がある。一方,光が過剰な場所では,強光によるストレスを避けながら光合成には適当な量の光を受け取るようにする必要がある。植物が与えられた光環境に応じた光合成特性や受光体制を発達させることを「光馴化」といい,植物の生理生態学では古くから重要な研究課題の中心であった。
 近年,個葉の光馴化の生理学的メカニズムや生態学的意義についての研究は,多岐にわたって展開されている。植物は,光環境に応じた葉を発達させる際にどのようにその光環境を認識しているのか? 光環境が急激に変化したときに,葉の内部のかたちと機能はどのように光環境に追従していくのか? 様々な光環境に生育する種では,個生育地ごとに光に対して異なる反応をするのだろうか? 長い時間にわたって葉を持ち続ける植物は,光環境の季節的な変化に対してどのような反応を示すのだろうか? このシンポジウムでは4人の若い研究者を招き,我々の身近な植物に見られる光馴化のメカニズムと生態学的意義について最新の研究成果を紹介していただく。講演を通して,光をめぐる植物の様々な「ふるまい」をより広く深く知ることができるだろう。

S10 フィールドの寄生虫生態学2.寄生虫の外来種問題

3/29(火) E会場 09:00 -- 12:00
企画責任者:横畑泰志(富山大・教育・環境生物学)・浦部美佐子(福岡教育大・理科教育・生物)
 外来種問題はあらゆる生物の分類群、生活型群に共通の問題であるが、その現状や対応のあり方には群ごとに大きな違いがある。特に種記載もいまだ十分でない多くの無脊椎動物では、国内にどのくらいの外来種がいるのか、それぞれの種が在来種なのか外来種なのかも不明なものが少なくなく、対策もとられていないものが多い。特定外来生物被害防止法に基づく今後の行政的対応も、そうした生物については事実上ほとんど無策に近いようである。特に寄生生物については、一部のものには医学や産業上の問題に関連して古くから対応がはかられてきたのに対して、在来生態系への影響という観点で対応がなされてきたものは皆無に近い。寄生虫は主に医学領域で研究されてきたため、自然環境や生態系の保全という観点で語られること自体が少なく、外来種問題についても同様であった。外来寄生虫が在来生態系に及ぼす影響も、現在では予測が難しく、入ってみなければわからないというのが実態である。しかし、他の生物の導入の増加に伴って、外来寄生虫の侵入も確実に増加しているものと考えられ、対応が必要になっている。
 そこで、まず一般の生態学研究者に寄生虫の外来種問題について関心を持っていただき、同時に寄生虫研究者もそうした方々から助言をいただく機会を得る目的で、非学会員の講演者2名のご協力のもとに表記の集会を開催する。どのようなことになるのか、主催者にとっても現在では予測が難しく、やってみなければわからないというのが実態である。ぜひ多くの方のご参加、ご協力をお願いしたい。

S11 農業生態学の本道:風土と暮らしの見直しからの生態系保全
 The Mainstream of Agroecology: Regeneration of livelihoods for conservation of ecosystem

3/29(火) F会場 09:00 -- 12:00
企画責任者:日鷹一雅(愛媛大・農・附属農場 )
 農業生態学(Agroecology)は,1980年代 Cox and Atkins (1979) によって、第3世界を主にした“暮らしlivelihood”をベースに置いた生活農業と先進諸国の商業的集約農法の生態系の比較解析を通して体型化されていった持続的農業のための科学である(Altieri, 1985)。その後、ESAではAgroecologyの部会が設立され、境界領域である農学諸分野との協働関係を築くなど、近年徐々にではあるが各界に浸透してきている。日本では、農業生態学というと、水田や里山など二次的自然の生態系や生物多様性の保全や再生の科学というイメージが強いが、本来は食料獲得のための農業システムを生態学的に解析し、農業生態系のあり方を提案していくのが役割であるはずである。二次的自然が優占的な日本やアジアの自然では、田舎(生産)と都会(消費)の両面から私たちに暮らしを見直す視点からの理論構築、基礎研究と現場の実践が必要である。
 そこで今回は、Agroecologyの先導的な役割をこれまで果たし、最近” Agroecology is the ecology of food system ”であると標榜する米国カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校のCenter for Agroecology and Sustainable Food Systemsからの招待講演者と、わが国の里山と農耕地の研究者による話題提供から、今後の日本やアジアにおける風土的な自然のあり方の今後を占うためのシポジウムを企画した。 (講演は日本語)

フォーラム
S12 自然再生事業に望まれる生態学的基準

3/29(火) L会場 09:00 -- 12:00
企画責任者:矢原徹一(日本生態学会生態系管理専門委員会委員長)
2002年12月に自然再生推進法が成立し,これを受けて各地で自然再生事業 が進められている.しかし,生態学的に見て適切な目標と手法にもとづかない限り,「自然再生」事業が新たな環境破壊を招くおそれがある.このため、日本生態学会 生態系管理専門委員会では、「自然再生事業に望まれる生態学的基準」(案)を作成 し、大阪大会で公表する。この基準(案)について、広く討議を行なうために、この 企画を計画した。フォーラム参加者に広く意見を聞き、基準(案)の改訂に役立てたい。
日本生態学会生態系管理専門委員会:「自然再生事業に望まれる生態学的基準」 (案)の提案
公募シンポジウム & フォーラム一覧へ
3/28の公募シンポジウムへ
3/30の公募シンポジウムへ