日本生態学会

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第6回(2013年) 日本生態学会大島賞受賞者

高橋 耕一(信州大学理学部生物科学科)
八尾 泉(北海道大学大学院農学研究院昆虫体系学教室)


選考概要

 高橋耕一氏は、日本の亜高山帯から森林限界にかけての地域を主な研究フィールドとし、気温の温暖化が樹木の成長、生残、移動におよぼす影響を調べてきた。主要な研究成果として、(1)高標高域に生育する樹木は、温暖化とともに成長が増加するが、低標高域の樹木はとくに増加傾向を示さない。これは、温度が制限要因になっている高標高域においてのみ、気温の上昇が強く影響することを示す結果である。また、気候温暖化シナリオのもとでシミュレーションをおこない、温暖化が高標高域の樹木の成長を増加させることを予測した、(2)その一方で、温暖化による樹木の成長の改善は、必ずしも分布をさらに高い標高域に拡大する方向に作用するとは限らないことも示した。その背景には、積雪などの撹乱因子による死亡率の影響が卓越していることがあることを指摘している。これらの主要成果に加えて、森林構造仮説などのモデルを駆使し、森林動態や個体間競争からみた多種共存機構の解析や樹冠の機能に関する研究成果もあげている。これらの研究成果は、Trees、Climatic Change、Ecological Research、Annals of Botany、Tree Physiologyなどに50編余の論文として発表されている。生態学会では多くの発表を行なっている。以上の理由により、高橋耕一氏は、日本生態学会大島賞の受賞者として相応しいと判断する。

 八尾泉氏は大学院生時代より16年間北海道のカシワ林においてアリ−アブラムシ共生関係の進化過程について研究してきた。アリは対捕食者防衛をするのでアブラムシにとって利益があることは古くから知られているが、八尾氏は、実験的手法も用い、アリがいるとコロニー存続時間自体は長くなるが、アブラムシのサイズや子の数が減るという不利益があることを発見した。さらに、これが、アリがいると、高頻度で1回あたりは少量の糖蜜を出し、その糖蜜はショ糖・トレハロースが高く、多様なアミノ酸を含みアミノ酸量自体も高いため、アブラムシにとって炭素・窒素欠乏を引き起こすためであることを見つけた。また、種間比較によって、アリ随伴種では、アリによって移動が制限され移動が小さく、そのため集団間の遺伝的多様性が高くなるばかりでなく、飛翔筋・羽が小さくなるという形態的変化が起こっていることを明らかにした。ここから、アリとの随伴への選択圧は確かにあるようであり、アブラムシは飛翔筋を小さくすることで甘露生産をあげているという仮説を提出している。捕食リスクとエネルギー欠乏による産子数減少のバランスを通じて、アブラムシ個体の適応度にどうかかわるかまでは未解決ではあるものの、アリ・アブラムシ共生研究において、長年の野外観察と実験的手法によって、コストおよびベネフィットの観点からの優れた成果を上げている。これらの研究成果は、Biology Letters、Oikos, Oecologia, Journal of Evolutionary Biology, Ecological Entomologyなどに掲載されている。生態学会では多くの発表を行なっている。以上の理由により、八尾泉氏は、日本生態学会大島賞の受賞者として相応しいと判断する。

選考委員会メンバー:宮竹貴久,谷内茂雄,吉田丈人,粕谷英一(委員長),酒井章子,綿貫豊,大手信人,佐竹暁子,正木隆

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