日本生態学会

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第11回(2018年) 日本生態学会大島賞受賞者

大園 享司(同志社大学理工学部環境システム学科)


選考理由

大園 享司 氏
大園享司氏は、主に温帯林における落葉分解過程と分解に関わる菌類の生理生態について、有機物構成成分比に基づいて統一的に把握することを続けてきた。この功績から2007年に日本生態学会宮地賞を受賞している。それ以降は標高のような環境勾配や極域から熱帯までの地理的勾配を用いて、菌類の多様性と分解機能についていくつもの興味深い成果を挙げてきている。低緯度ほど落葉漂白が活発でより多様な菌類がこれに関わることや、落葉漂白に関わる菌類の一部は内生菌や木材腐朽菌であることを明らかにしている。内生菌の種多様性は高緯度ほど低くなる一方で、宿主樹木との相互作用の特殊化の程度が増大することや、低緯度ほどリター分解菌の多様性も高く、子実体形成期間が長く、表層リターが利用されていることも明らかにしている。また木材腐朽菌群集組成は地域間で異なるにもかかわらず、リグニンとセルロース分解と窒素動態には共通性が認められることなども明らかにした。これらの成果をFungal Diversity誌、Fungal Ecology誌、Plant and Soil誌といった国際誌に2007年以降に60編以上発表しており、森林生態系の物質循環の中で重要な過程である分解系について、環境勾配も考慮に入れて理解を推し進めた大園氏の貢献は大きい。日本生態学会における各種活動や一般書などの著作活動も目覚ましい。以上のように大園享司氏は広域での野外研究業績、国際性いずれの点においても高く評価されることから、日本生態学会大島賞の受賞者として相応しいと判断する。

選考委員会メンバー:岸田治(選考委員長)、鏡味麻衣子、日浦勉、吉田丈人、塩尻かおり、土居秀幸、井鷺裕司、北島薫、東樹宏和

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