日本生態学会

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第19回(2026年) 日本生態学会大島賞受賞者

竹内 やよい(大阪公立大学 大学院理学研究科/ 国立環境研究所 生物多様性領域)


選考理由

自薦1名、他薦1名の応募がありました。いずれの候補者も、長期間にわたる一貫した取り組みの中で着実な成果を挙げていると評価されました。一方、慎重な議論を重ねた結果、1名の候補者については、研究の意義や主要論文の位置付けに関する説明がやや不十分と判断され、今回の推薦には至りませんでした。選考の結果、竹内やよい氏を大島賞の受賞候補者として選出しました。

竹内やよい 氏
 竹内氏は、これまで24年にわたり一貫して熱帯林の長期観測に基づく森林群集や樹木個体群の維持機構などの生態学研究に取り組んできた。代表的な研究成果の一つは、熱帯樹木の更新ステージにおける種子散布および繁殖様式に関する一連のフタバガキ科樹種の比較研究である。種子散布と死亡要因における種特異性を明らかにするとともに、開花規模が自殖率の変化を介して近交弱勢の影響を顕在化させることを示した。また、先住民地域社会が保有する断片化した森林においても遺伝的に多様な種子が供給されており、地域社会の森林がフタバガキ科樹種の遺伝的多様性の保持において重要な役割を果たしていることを示した。群集全体の種多様性においても、先住民地域社会が保有する断片化森林がその維持に大きく貢献していることを示した。生物群集の多様性維持機構に関する理論的検討では、マレーシアおよび中米の群集データを用いて中立説よりもそれぞれの地域特有の現象の影響が大きいことを明らかにした。東南アジアの熱帯林は、不定期に一斉開花が生じる現象で知られているが、竹内氏の研究成果は、そうした稀な現象を対象に、長期にわたり根気強く観察とデータ収集を継続してきたことによるものである。このように、マレーシア・サラワク州では、現地研究者との協力体制・信頼関係を築き上げ、樹木の一斉開花や更新動態、生物多様性の保全、さらには先住民の生態系サービス認識の解明など、生態学と社会科学の接点を含む多角的な研究を精力的に展開している。その結果、種多様性の生態学の発展とその保全に向けた先導的な役割を果たしており、今後ますますの貢献が期待される。東南アジア熱帯研究は、日本の研究者の果たす役割が大きかったが、それを継承し継続する活動は大島賞の受賞にふさわしいと評価する。

選考委員会メンバー:門脇浩明、瀧本岳、深野祐也、工藤洋、深谷肇一(委員長)、山口幸、安藤温子、大澤剛士、佐々木雄大

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