日本生態学会

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会長からのメッセージ -その4-

「”コピペ”は許されない」

 STAP細胞に関する論文を巡る問題に日本の科学コミュニティが揺れています.日本分子生物学会は,「単純ミスの可能性を遙かに越えている」として,事態を招いた原因の検証と報告を理化学研究所に対して要望する学会長声明をかなり早い段階で発表しました.我々(生態学会)も無縁ではいられません.広島大会で持たれた生態学関連の英文誌協議会(Ecological Research, Population Ecology, Journal of Ethology, Plant Species Biology の編集責任者などの懇談会)でも,STAP細胞論文を巡る問題が話題になりました.

 マテメソの記述を”コピペ”したことはありませんか?すでに出版されている論文の研究方法と同じ手法で調査したのだから,同じ記述になるのは仕方がないだろうと考えてはいけません.たとえ自分の論文からの”コピペ”でも引用であることが明示されていなければ,研究倫理が問われます.

 ”コピペ”と引用は違います.他の論文から文章をそのまま引用したいなら,「”多くの作為的な改変は,単純なミスである可能性を遙かに超えており,多くの科学者の疑念を招いています.”(大隅 2014)」と書かなければなりません.引用符を使って,他の著者による記述の利用であることを明示する必要があります.要約して紹介するならば,「作為的と思われる改変に多くの科学者が疑念を抱いている(大隅 2014)」と書くことになります.このような引用に関する技術を我々の世代は体験的に理解してきたつもりですが,引用符付きの引用は何行まで許されるのか?という問題になると,ちょっと言葉につまります.

 自覚なく研究者倫理に外れていることをしていないだろうか.来年の鹿児島大会では,研究倫理についてのフォーラムを開催しようと思います.いっしょに勉強しましょう.

引用文献
大隅 典子(2014) 理事長声明『STAP 細胞論文等への対応についての再要望』 特定非営利活動法人 日本分子生物学会

2014年3月16日 会長 齊藤 隆

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