日本生態学会

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会長からのメッセージ -その11-

「リール雑感」

 英仏生態学会合同大会が開かれたリールは歴史的に国際性に富んでいます.フランス,ベルギー,オランダにまたがるフランドル地方の中心都市ですし,ドイツとの関係も浅くありません.学生も多く,街を歩くと様々な民族を連想させる人に出会います.言葉は,というと,仏語圏なので,英語は嫌い,という感じの人も少なくないようです.朝食の面倒をみてくれる宿のおばさんは,朝食券を渡すときに部屋番号を確認するのですが,英語で返事をすると戸惑った様子で,不機嫌になりました.次の日に,「ボンジュール」と挨拶し,部屋番号を書いた紙を見せると,「メルシー」とにこやかに言葉を返してくれました.一方で,TGVのリール・ウロップ駅に着いてうろうろしていたときに道を尋ねたおばさんは,「英語が下手でごめんなさいね」と英語で言いながら,ホテルに行くために乗る地下鉄の改札口まで丁寧に案内してくれました.感じの良い人が多いですね.

 宿の廊下ですれ違うときは,見知らぬ人にも「ボンジュール」と挨拶をします.私は,「ハイ」とか「ハロー」とか,返事していたのですが,「ボンジュール」という言葉の響きがとても心地よいので,練習をして「ボンジュール」と応えるようにしました.結構,快感です.

 合同大会には番外企画として “Sunrise run”という催しがありました.我がエコカップと似たようなものだろうと想像して,参加することにしました.大会初日は,夕方のレセプションで始まります.昼間は時間に余裕があったので,“Sunrise run”コースの下見を兼ねて,ジョギングに出かけました.中世の面影を残す街並みの石畳を走るのは新鮮です.しかし,なんだか煙草臭い.リールは主な建物内では禁煙らしく,喫煙者は街頭にある「灰皿」(皿と言うよりも鉄製の桶)の前で煙草を吹かします.老いも若きも男も女も,日本でコンビニの前にたむろしているジベタリアンのような雰囲気で(地面に座ることはないけれど),プカプカとやっています.少し大きな建物の前には十人をこえる愛煙家がいます.つまり,街頭をジョギングすれば,数十メートルおきに煙の中を突ききることになります.ちょっとがっかりです.

 下見の成果を発揮しようと12月10日の集合時間(午前5時50)に出向きました.この時間まだ太陽は出ていません.日の出は8時半頃なので,真っ暗です.全然“Sunrise run”ではありません.それはまあ良いのですが,通知されたスタート地点には誰もいないのです.エコカップをイメージして人だかりを探しましたが,その気配がありません.どうしたものかと大会会場の方にジョグしていくといました.数人がストレッチをしています.結局この日の参加者は15名,地図を渡されてナイトランに出発です.私は,自分のペースにあったウィルともう一人(走りながら自己紹介したので名前を聞き取れなかった)の3人で5キロのコースに挑みました.前半は地図通りに走れましたが,後半は道が入り組み,真っ暗なせいもあって下見も役に立たません.迷子気味です.勘の鋭いウィルの先導で走ったら,あっけなくスタート地点にもどってしまいました.500メートルくらい近道した感じです.でも,ほんとの迷子にならずによかった.“Sunrise run”は11日にもありました.まだ暗いので建物の前には愛煙家はいません.リールのジョギングは早朝に限ります.

 やはり,デイヴィッド・イノウエさんのことは書かずにはいられません.米国生態学会の次期会長(来年の100周年記念大会の時の会長)です.今年の広島大会に参加してくれました.それ以来,いろいろと声を掛けてくれます.今回もデイヴィッドに誘われたことが参加のきっかけでした(スウェーデンでの共同研究のついでということもありますが).デイヴィッドは,大会中はいろいろな人に紹介してくれました.懇親会では,英国生態学会の歴代会長であるマイク・ハッセルさんやチャールズ・ゴッドフレーさんに紹介してくれ,奥さんのボニーとともに会話の輪に入れるように気を遣ってくれました.デイヴィッドが日系ということもあるのでしょうが,ほんとうに細やかな心遣いを感じます.

 デイヴィッドの先祖は尾道出身で,広島大会の参加の折に墓参りしたそうです.そのとき,自分の名刺を墓石に残してきたら,名刺をみた遠縁から連絡があり,親戚づきあいが始まったそうです.尾道のほかにも宮島,京都をめぐり大変充実した日本訪問だったようです.

 会長を務めているとたくさん良いことがあります(それをすぐに数え上げられないところが辛いところですが).その中で,著名な生態学者と知り合いになれるのは間違いなく役得です.デイヴィッドはもちろんですが,あのハッセル,あのゴッドフレーといっしょにワインを飲めるチャンスはそうあるものではありません.とくにゴッドフレーさんは日本びいきで嶋田正和さんとの交流や日本を訪問したときに親切にしてもらったと厳佐さんらの名前をあげて懐かしそうに話してくれました.私が,リールで親切にしてもらえたのもこのような皆さんのお陰です.ありがとうございました.

2014年12月13日 会長 齊藤 隆

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