日本生態学会

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会長からのメッセージ -その14-

「ふしぎのお話365」

 「ふしぎのお話365」(自然史学会連合監修,誠文堂新光社)という本をいただきました(役得ですね).この本は,自然史学会連合の呼びかけで,所属する39学会から「身の回りの自然」に関する話題を集め,学会連合と誠文堂新光社が話題を絞り込み,6人のライターが研究者に取材するかたちで,それぞれの話題を1ページにまとめたものです.1月1日から12月31日までの1年に見立てて365の課題が掲載されています.この本の正式名称が「理科好きな子に育つふしぎのお話365 見てみよう,やってみよう,さわってみよう体験型読み聞かせブック」であるように,小学校低学年の子どもたちにもわかるように自然史科学の話題が書かれています.

 日本生態学会の会員もたくさんの話題を提供しています.種生物学会,動物行動学会など友好学会からの提供と区別できないのですが,パラパラとページをめくると学会員だろうなと思われる方のお名前を協力者の欄にたくさん見つけることができます.

 1月1日のページを見てみましょう.「人間が夢を見るのはなぜ?」と題して,夢と記憶の関係が解説されています.短期記憶は一時的に海馬に蓄えられ,重要な情報だけが大脳皮質に移されて,長期的に記憶されます.海馬から大脳皮質への情報の移送は,外からの情報がほとんど入ってこない眠っているときに行われ,夢には,その移送された情報が現れるのだそうです(知らなかった).

 このため,長期記憶の能力を高めるためには睡眠が大切になります.小さい頃は,新しい情報を蓄えることが重要なので,長い睡眠時間が必要で,歳をとると新しい情報に接することが少なくなるので,短い睡眠時間でも対応できると理解できますね.最近,あまり夢を見なくなったのは,毎日,覚える必要がないことばかり(忘れてしまいたいことばかり)を経験しているからでしょうか.あたっているような気がします.

 人間だけでなく動物も夢を見るそうです.我が飼い犬(ハリー)がよだれを流して,いびきをかいている姿を見ていると,ごちそうを食べている夢でもみているのかと思います.ハリーは今12歳ですが,最近よく寝るようになりました.イヌの睡眠時間は,歳とともに長くなるようです.長期記憶しなければならない新しい情報量が歳とともに増えるのでしょうか.そうとは思えません.睡眠時間と夢や長期記憶の関係は単純ではなさそうですね.

 哺乳類の中では,カモノハシだけが夢を見ないのだそうです.短期記憶だけで生活しているのでしょうか.それとも,短期記憶を長期記憶に移送する夢とは関連しない別のルートを持っているのでしょうか.興味は尽きません.

 学会が編集に協力したので,会員の皆さんは割引価格でこの本を購入できます(大特価というわけではありませんが).購入には,こちらの注文用紙 をご利用ください。

 2015年3月10日 会長 齊藤 隆

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