| 要旨トップ | ESJ70 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S06  3月20日 9:00-12:00 Room A

学際的・分類群横断的に動物のコミュニケーション研究を見てみよう
Animal communication studies from interdisciplinary and cross-taxonomic perspectives

太田菜央(マックスプランク鳥類学研究所), 向井裕美(森林総合研究所)
Nao OTA(Max Planck Institute for Ornithology), Hiromi MUKAI(Forestry and Forest Products Research Institute)

他個体とのコミュニケーションは、ヒトをはじめとする多くの動物において生存や繁殖成功に大きく影響する。動物行動学において、コミュニケーションとは「発信者から受信者へと信号を介して情報が伝えられること」とされている(行動生物学辞典より)。有名な例としては、「雄の鳥が歌を介して自身の質を宣伝し、雌が配偶者選択をおこなう」などが挙げられるだろう。
 動物のコミュニケーションは多様かつ複雑であり、それを理解する上での着眼点もまた多岐に渡る。前述の鳥の歌を例にとっても、「雄がどのような歌をうたうのか」「雌がどのような歌を好むか」に加えて、歌以外の信号(羽装、ダンスなど)がどのように機能するのか、それら信号のやりとりにどのような生物学・生態学的背景が影響しているのか、といった様々な観点からコミュニケーションを考察することができる。雌側の信号が求愛コミュニケーションに重要な役割を持ちうることも、近年注目を集める話題の一つである。加えて解析技術の発達により、定量化が困難であった複雑な行動やヒトにとって馴染みの薄い信号(振動、紫外光、超音波、電気信号など)について調べることが可能になりつつあり、コミュニケーション研究はあらゆる面で多様かつ新たな形での発展を遂げている。
 コミュニケーション研究は学際性の高さが大きな魅力の1つである一方で、それゆえにしばしば研究分野や分類群毎に情報交換の場が偏ってしまうことがある。そこで本シンポジウムでは分類群横断的に、動物のコミュニケーションについて独自の切り口から調査している研究者から話を聞く。研究の着眼点や背景について情報共有しながら、その研究の面白さや今後の展望に関して議論する。これにより、参加者らにコミュニケーション信号の伝達メカニズムおよびその機能や進化を考える上で新たな視座を提供することを目指したい。

コメンテーター:相馬雅代(北海道大)

[S06-1]
ナナホシキンカメムシの精巧なコミュニケーションにおける振動シグナルの機能 *向井裕美(森林総合研究所)
Function of vibrational signals in elaborate communication in jewel bug *Hiromi MUKAI(FFPRI)

[S06-2]
カエデチョウ科鳥類の羽装模様の進化と視覚選好の関係 *水野歩, 相馬雅代(北海道大学)
Plumage pattern evolution and visual preference in Estrildid finches *Ayumi MIZUNO, Masayo SOMA(Hokkaido Univ.)

[S06-3]
弱電気魚の電気パルス信号の解読 *福富又三郎, Bruce A CARLSON(ワシントン大学)
Decoding electric pulse signals from socially interacting electric fish *Matasaburo FUKUTOMI, Bruce A CARLSON(Washington Univ. in St. Louis)

[S06-4]
カエルの音声コミュニケーション *合原一究(筑波大学)
Acoustic communication in male frogs *Ikkyu AIHARA(Univ. of Tsukuba)

[S06-5]
ハエと蚊の聴覚コミュニケーション *上川内あづさ(名古屋大学)
Acoustic communication in fruit flies and mosquitoes *Azusa KAMIKOUCHI(Nagoya Univ.)

[S06-6]
セイキチョウの求愛タップダンスに含まれるマルチモーダル信号の役割 *Nao OTA, Manfred GAHR(Max Planck Institute)
The roles of multimodal signals in the courtship tap-dance of cordon-bleus *Nao OTA, Manfred GAHR(Max Planck Institute)


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