日本生態学会

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第9回(2011年)日本生態学会功労賞受賞者

嶋田 正和

 嶋田正和氏は実験系個体群でカオス理論を厳密に検証した研究などで顕著な業績をあげています。それに加えて、氏の余人に代えがたい生態学への顕著な貢献はその啓発活動にあります。日本の生態学における現在標準的な教科書である「動物生態学(新版)」を共著で執筆したほか、本学会の教育委員長を長らくつとめ初等中等教育に現代科学のエッセンスを反映させることに尽力し成功してきました。また、本学会や関連諸学会において多くの委員をつとめ、多数のシンポ等の企画に加え、高校生ポスター発表・賞の設立と運営も行っています。さらに、多忙の中Evolve等のメーリングリストでも積極的に発言し、国内での生態学に関する議論を活性化させるなど、国内における中心的な啓発家の一人となっています。また、多数の学生を育て、その中で得られた成果は、PNAS, J. Anim. Ecol, Advances in Ecological Research, Evolution, Proc. Roy. Soc. B、など著名誌を中心に多数掲載されたほか、11の著書、21の総説などを執筆しています。
 以上のように、嶋田氏は日本生態学会の運営および生態学の発展に大きく貢献されました.
参考文献:Kristoffersen et al.(2001) J. Anim. Ecol.; Kondo et al. (2002) PNAS.; Kobayashi, Tanaka and Shimada (2003) Evolution; Tuda and Shimada (2005) Adv. Res. Ecol.; Kato et al. (2010) Mol. Phylogenet. Evol.

難波 利幸

 難波利幸氏は、2005年の大会企画委員会の発足にともなって委員長に就任され,3大会連続して大会の責任者を務められました。大会企画委員会の設置は,大会規模の拡大にともない従来の実行委員会形式を抜本的に改める大会運営の大改革でした(その経緯は日本生態学会誌 56:252-257 (2006) に掲載されている)が、その発足に当たって大会を準備するという難事業に献身的に取り組まれました.難波さんのリーダーシップなくしては企画委員会の活動を軌道に乗せることは難しかったと思います.その他にも様々な委員を歴任され、日本生態学会の運営に大きく貢献されています.
 研究においては,難波さんは,数理モデルを用いて複数種の共存条件,食物網の安定性など群集生態学上の重要課題に先進的な研究成果をあげ、一連の研究は、Oikos, Ecology, Theoretical Population Biologyなどに発表されております。また,群集生態学の理論研究を展望した多くの解説書を執筆され,生態学の普及にも大きく貢献されています.
 以上のように、難波氏は、日本生態学会の運営のみならず,生態学の発展にも大きく貢献されました.
参考文献: Nakazawa et al. (2010) Oikos; 難波利幸.(2009) 『生物間ネットワークを紐とく』京都大学学術出版会 pp.1-47; Namba et al. (2008) Ecological Complexity; 難波利幸. (2005) 日本生態学会誌; Tanabe and Namba (2005) Ecology; Namba and Hashimoto (2004) Theoretical Population Biology.難波利幸. (2001).『群集生態学の現在』京都大学学術出版会 pp. 93-122; Namba and Takahashi (1993) Theoretical Population Biology.

鷲谷 いづみ

 鷲谷いづみ氏は、日本生態学会会長をつとめたほか、1996年には保全生態学研究会を結成し、「保全生態学研究」の発行を行うなど学会の運営に大きく貢献しています。また、日本学術会議会員(現第二部幹事)をつとめ、行政や社会に対する「生態学者の発言」を積極的に行ってきました。啓発活動にも積極的で、保全生物学の標準的教科書である「保全生態学入門」(共著)をはじめとした和文教科書や単行本を多数出版し、環境問題における日本のオピニオンリーダーの1人になっています。研究においても基礎研究と生物保全や生態系修復に関する応用研究の双方において顕著な成果をあげ、絶滅危惧種の特性と現状を、繁殖生態学、生理生態学、集団遺伝学の手法を統合的に採用した一連の研究は、Plant & Cell Physiology、Journal of Ecology、Oecologia、Functional Ecology、 Biological Conservationなどの著名誌に多数論文掲載されています。
 以上のように、鷲谷氏は日本生態学会の運営および生態学の発展に大きく貢献されました.
参考文献: Matsuzaki et al. (2009) Oecologia, Ishihama et al.(2006) Journal of Ecology. Washitani et al. (1997) Biological Conservation; Washitani et al. (1994) Journal of Ecology. Washitani and Masuda, (1990) Functional Ecology.

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