日本生態学会

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第18回(2015年) 生態学琵琶湖賞受賞者

謝志豪 Chih-hao Hsieh(国立台湾大學 海洋研究所)

推薦理由

 Chih-hao Hsieh氏 は、水産資源やプランクトンを対象とした個体群変動や群集構造について極めて新規性の高い研究を行って来た。その研究スタイルは一貫しており、長期観察データを数理・統計的手法により解析することで、水圏生物の長期変動や環境応答に関する理論構築や仮説検証を行っている。近年では琵琶湖に関するプランクトン群集の長期変動やサイズ構造の変化に関する研究も行った。それら成果は、NatureやScienceなど高インパクトジャーナルに掲載されており、これまで発表した47編に及ぶ学術論文の被引用数は1300回以上に及んでいる。特にHsieh氏による個体群や群集の長期変動に関する研究は、因果関係が不確かな現象が長期観測データによってのみ正しく解明出来ることを示しており、継続的な生物モニタリングの重要性を指摘するものとして高く評価される。また、Hsieh氏が解析に取り入れている理論モデルと統計手法の統合的アプローチは独創的で、多くの誤差をともなう野外データから重要な現象を抽出するうえで極めて有効であり、広く地球科学や環境科学などでの適用が期待出来る。
 Hsieh氏は、近年、生態学や海洋分野の日本人研究者とさまざまな研究プロジェクトを推進しており、国際的な学術交流活動においても貢献している。また、指導する学生を日本や欧米の学会に積極的に引率し発表させるなど、人材育成にも熱心である。このように学術のみならず、国際交流や人材育成活動においてもHsieh氏の業績と活動は高く評価できることから、生態学琵琶湖賞にふさわしいと判断され、第18回生態学琵琶湖賞に推薦することとした。

選考の経緯

 第18回生態学琵琶湖賞には、7名の応募があり(日本人5名、国外2名)、選考は運営委員長より任命された7名の選考委員会委員により行われた。選考作業は平成27年2月4日より開始した。まず、応募者の応募書類を選考委員が精査し、研究成果の新規性と業績、学術的・社会的貢献、今後の発展性という観点から、相対評価を行った。この選考により、上位4名を一次選考通過候補者とし、候補者が提出した主要論文5編を精読して二次選考を行うことした。この二次選考では研究成果とそのインパクトに重点をおき各審査員10点満点で審査を行った。その結果、Chih-hao Hsieh氏を最終候補者として運営委員会に推薦することとした。

選考にあたっての付記

 二次選考に残った応募者うち、選に漏れた方の評価も非常に高かった。また、一次選考で選ばれなかった応募者にも近い将来に琵琶湖賞に相応しい十分な業績を期待出来る方がおられた。したがって、選に漏れた方々も、水圏生態系やその周辺での研究を牽引し今後の活躍が期待出来る人材と言える。この方々すべてが、研究をさらに発展させることで、次回には有力な候補になり得ることを付記したい。

選考委員会メンバー:占部城太郎(委員長)、今井章雄、大手信人、中野伸一、中村太士、西野麻知子、森 誠一

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