日本生態学会

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第19回(2021年)日本生態学会賞受賞者

矢原 徹一(九州オープンユニバーシティ)


選考理由

1名の推薦があった。応募者は植物の進化・繁殖生態学の研究で成果を上げた後、生物多様性に関連する国際的な方針決定に貢献し、生物多様性観測の国内ネットワーク構築で中心的な役割を果たすなど、日本国内外の生物多様性研究推進に多大な役割を果たしてきた。これらの業績は日本の生態学の発展に大きく貢献したという点で委員全員の意見の一致をみたことから、矢原 徹一氏を生態学会賞の受賞候補者として選出することになった。

矢原徹一 氏
矢原氏は植物の進化生態や繁殖生態において研究業績を上げてきた。日本の万葉集に詠まれた葉の黄変現象が、植物のウイルス感染の最古記録であることを示した研究、植物の繁殖様式に関する理論的研究などにより、この分野の研究発展に大きな役割を果たしてきた。さらに生物多様性に関して、グローバルなオピニオンリーダーとして日本国内外の生物多様性研究推進に多大な貢献をしてきた。矢原氏は日本における生物多様性研究のキーパーソンであり、生物多様性に関する最も重要な条約である「生物多様性条約」の方針決定に貢献し、生物多様性観測ネットワークや、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォームなどを立ち上げることにより、生態学の発展に大きく貢献した。これらのプラットフォーム設立を通じて構築された研究基盤は次世代の生態学研究に活用されることになり、今後の生態学の発展に寄与する、きわめて価値が大きい業績である。Google Scholar citationsによるとこれまでの論文の総引用回数は5900回を超えており、2008年以降の生物多様性に関する論文の引用回数が非常に多く、矢原氏の生物多様性に関する活動が国際的にも高く評価されていることが伺える。特に2015年に発表されたオピニオンペーパーは引用数が1200回を超えている。矢原氏は300以上に上る各種著作・オピニオンの発表によって様々な分野に大きな影響を与え、生態学の深化や新たな研究展開に指導的役割を果たしてきており、生態学会賞に値すると評価された。

選考委員会メンバー:内海俊介、岡部貴美子、三木健、佐藤拓哉、辻和希、半場祐子(委員長)、小野田雄介、鏡味麻衣子、佐竹暁子

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