第24回(2026年)日本生態学会賞受賞者
高村 典子(長野県諏訪湖環境研究センター)
選考理由
1名の推薦がありました。推薦された高村典子氏は、湖沼生態学分野において優れた研究業績を有し、さらに湖沼生態系の長期モニタリング事業や環境行政への貢献など、多岐にわたる精力的な活動を通じて、基礎と応用の両面で指導的役割を果たしてきました。日本の生態学の発展に顕著な貢献を果たしていることから、高村氏を日本生態学会賞の受賞候補者として選出しました。
高村典子 氏
高村氏は、霞ヶ浦をはじめとするさまざまな湖沼において、植物プランクトンを中心とした生物群集の研究を行い、湖沼生態学の中心課題に取り組んできた。ハクレン・コイ・ザリガニなどの外来種の導入が湖沼生態系の構造と機能に与える影響を解明した研究、ワカサギの導入が栄養段階を超えたカスケード効果を通じてヒメマス漁獲量の減少や水質悪化に影響することを示した研究、畜産由来の栄養塩負荷により沈水植物からアオコが優占する状態へのレジームシフトが引き起こされることを実証した研究は、いずれも生態学の基本概念を実証した研究であり、その成果は国内外において高く評価されている。高村氏は、霞ヶ浦定期調査の生物部門を継続し、50年続く霞ヶ浦長期モニタリング事業として発展させてきた。その中で氏の指導を受けた若手研究者が長期モニタリングデータを活用し、時系列解析を行って近年顕著な業績を上げていることは、氏による研究活動が次世代研究者育成においても大きな成果を挙げていることの証である。氏による研究成果は、150報を超える学術論文となり、さらに教科書や一般向け書籍としても発表され、様々な人為的な要因が生物間相互作用を変化させ、生態系全体にまで波及効果をもたらすことを社会に広く認知させた。また、日本生態学会への貢献(琵琶湖賞・功労賞・Ecological Research Data Paperの推進)、IPBESや日本学術会議での活動、国や地域の環境行政への助言などにも多岐にわたる貢献を果たしてきた。このように、我が国の湖沼生態学における実証研究を開拓し、長きにわたり生態学の発展を支えてきた高村氏は、日本生態学会賞の受賞者にふさわしいと考える。
選考委員会メンバー:門脇浩明、瀧本岳、深野祐也、工藤洋、深谷肇一(委員長)、山口幸、安藤温子、大澤剛士、佐々木雄大
