日本生態学会

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第6回(2008年)日本生態学会功労賞受賞者

藤井 宏一

 藤井宏一氏は、日本生態学会英文誌編集委員長として1993〜1996年のあいだEcological Research誌の編集にあたられました。藤井氏が編集委員長を努められた時期は、Ecological Research誌が国際誌として飛躍的に発展するための基盤が整備されつつあった時代です。掲載される論文の質を高めなくてはならない一方で、定期的に一定数の論文を掲載して行かなければならないような難しい時期に編集委員長の重責を負っていただきました。藤井氏が編集委員長を努めていた時期に発行された3年間のEcological Research誌は、毎年コンスタントに10ページ以上も増加していきました。
 研究の上では、実験個体群をもちいて個体群動態のモデル化と実験生態学の確立に尽力されました。とくにアズキゾウムシとヨツモンマメゾムシの個体数動態の解析・モデル化など、一連の研究は個体群生態学の発展の契機にもなっています。また豆の毒性とマメゾウムシの食害可能性の「食う−食われる」実験解析もなされ、その後のαアミレース・インヒビターの発見につながりました。共通する研究スタイルは、実験個体群動態・数理モデル解析・コンピューターによるシミュレーション解析・野外における「食う−食われる」の系統解析などで、すべて藤井氏が手がけた方向性を発展したものといえます。
 研究以外でも、生態学や個体群生態学、生物統計学に関する重要な教科書の執筆や翻訳を通じて大きく社会に貢献されています。
 教育の上では、筑波大学において多くの研究者の育成に携わられ、輩出された多数のすぐれた生態学者は現在の日本生態学会を担う一流の研究者になっています。
 以上のように、藤井宏一氏は日本生態学会の運営だけでなく、日本での生態学の発展と普及に力を尽くされてきたことから、日本生態学会功労賞にふさわしい方として推薦いたします。

西平 守孝

 西平守孝氏は、1993〜1995年までの3年間、日本生態学会幹事長を務められました。また、その他にも全国委員、東北地区会長を歴任され、2002年に開催された日本生態学会第49回大会では大会会長の重責を担われました。幹事長時代には、当時Ecological Research誌の出版をBlackwell Scientific Publicationsに移行した直後であっただけに、故大島会長を補佐し、その契約交渉にあたられ、現在の英文誌出版の基礎を固められました。同時に、会員管理関係の業務の委託先であった土倉事務所との契約内容の整理に関してもいろいろとご尽力なされました。大きな学会として発展を遂げつつあった日本生態学会の、あるべき事務局の姿を整えられたのは、影の力とはいえ、大きな功績として特筆できます。
 この間、ライフワークとして、沿岸浅海域生態系の生物群集の研究を、サンゴ礁、海草藻場、マングローブ湿地をフィールドとして進められ、特に生物群集における多種共存維持機構の解明をめざす中から、棲み込み連鎖仮説を提示し、生物による生息場所構築の重要性を論じられました。また、多くの著作の中でも「日本の造礁サンゴ類」は、日本におけるサンゴ研究の基盤を確実にしたものとして評価されています。このように、日本では数少ない海洋生態学者の1人として活躍なさるとともに、日本生態学会以外にも、日本ベントス学会や日本サンゴ礁学会等で要職に就かれるとともに、学術審議会専門委員や自然環境保全審議会委員等も歴任されました。
 以上のことから、西平守孝氏は、日本生態学会の運営に関してばかりではなく、海洋生態学の発展にも大きく貢献されたことから、日本生態学会功労賞にふさわしい方として推薦いたします。

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