日本生態学会

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第18回(2014年) 日本生態学会宮地賞受賞者

小野田雄介(京都大学大学院農学研究科)
佐藤拓哉(神戸大学大学院理学研究科)
杉浦真治(神戸大学大学院農学研究科)
山浦悠一(北海道大学大学院農学研究科)


選定理由

小野田雄介氏
 小野田雄介氏は、植物の生理生態の研究に一貫して取り組んでおり、(1)Rubiscoに含まれる窒素と細胞壁の窒素とのあいだにトレードオフが存在し、植物はこれら窒素の配分を環境変化や葉寿命に応じて可塑的に変化すること、(2)植物の高CO2濃度への環境適応を光合成と窒素利用の観点から明らかにしたこと、(3)陰葉では、陽葉よりも細胞壁への炭素配分を大きくして葉重量あたりの機械的強度を大きくすることで、葉身の薄さによる物理的なストレスへの抵抗性の低減が補償されることを解明したことなど、細胞や組織レベルでの資源分配、機能的形質の解析で顕著な業績をあげている。なかでも(4)世界90ヶ所から2819種のデータを収集して集約と解析を行い、植物の葉の力学特性を世界規模で評価した研究は特筆に値し、新しいスタイルの生態学を確立した。これらの研究の成果は、Ecology Letters、New Phytologist、Global Ecology and Biogeographyなどの国際誌に発表された。
 生態学会誌には総説(和文)も発表し、生態学会においても連年の研究発表に加えて、企画集会とシンポジウムを開催するなど、生態学会の発展にも積極的に貢献している。
以上の理由から、小野田雄介氏は日本生態学会宮地賞の受賞者として相応しいと判断する。

佐藤拓哉氏
 佐藤拓哉氏は、森林・河川生態系に寄生関係を取り入れ、「寄生者が宿主の行動操作を通して生態系間の資源移動を季節的に高める」、という新しいアイデアを提案した。
 主な業績は、(1)紀伊半島の河川において、サケ科魚類の餌項目の季節変化を調べ、秋にはハリガネムシに寄生されたカマドウマ・キリギリスがサケ科魚類の摂取エネルギーの91%、年間通じて60%を占めることを明らかにしたこと、(2)大規模野外実験により、河川に投入するカマドウマの量を変える実験区を作ったところ、投入しない区では魚類は水生昆虫を食べるようになり、そのため、縁藻類が増えるというカスケード効果をもたらされることを証明し、エネルギー移動が寄生者にコントロールされるという新しい発見をもたらしたこと、さらに、(3)紀伊半島の10の河川で、水中のハリガネムシ類が相対的に多い河川ほど、サケか魚類の餌中のカマドウマ・キリギリスの比率が高いことを発見し、前述の発見の普遍性を示している。また、(4)紀伊半島の10の河川におけるハリガネムシ・線虫類の多様性をあきらかにし、場所ごとに宿主との関係も多様であり、森林から河川への資源流入に変化をもたらしうることも示した。
 以上の成果は、Ecology、Ecology Letter、Oikosなどの国際誌に発表されている。また、これらの研究成果は一般の方にもわかりやすいものであり、朝日新聞で特集されるなど、生態学研究の一般への普及啓発にも大きく貢献している。
 以上の理由から、佐藤拓哉氏は日本生態学会宮地賞の受賞者として相応しいと判断する。

杉浦真治氏
 杉浦真治氏は、昆虫や陸貝などの陸産無脊椎動物を対象に種間関係や植物―動物相互作用などについての研究を精力的に進めてきた。主要な研究成果は外来種の導入や生息地破壊に伴う群集の変化について様々な観点から明らかにしたことである。なかでも在来種と外来種の関係とその背後にある要因を相互作用網の構造の解析から描出しようとした試みは独創的である。
 これらの研究は約10年間で60本以上という多数の論文に結実し、Proceedings of the Royal Society B、 Biological Conservation、 Journal of Biogeography、 Biological Invasionなどの国際誌に発表されている。生態学会では多くの発表を行なっているとともに、全国大会企画集会や地区会公開シンポジウムの企画、日本生態学会での総説の執筆なども行なっている。
 氏はポスドクとして研究環境が頻繁に変わる中で,自ら立案・主導した研究の成果を着実に国際誌に発表し続けてきた。この研究のアクティビティとスタイルは、若手研究者にとって、1つのロールモデルあると言えるだろう。
 以上の理由から、杉浦真治氏は日本生態学会宮地賞の受賞者として相応しいと判断する。

山浦悠一氏
 山浦悠一氏は、主に景観生態学やマクロ生態学の視点から森林の管理と鳥類多様性の関係を研究してきた。森林性鳥類の分布調査と生息地の分析から、生息地として好ましい天然林の面積だけでなく、その形や配置によって鳥類の多様性が大きく左右されることや、人工林であっても構造が複雑化することで鳥類多様性が増加することを示し、森林管理の指針を与える研究をされている。また、環境省自然環境保全基礎調査による鳥類群集データと気象や土地利用データを合わせた分析により、森林遷移の初期段階を利用する鳥類の個体数は減少していること、渡り鳥の個体数減少と東南アジアの森林減少に相関が見られることなどを指摘し、世界レベルで鳥類多様性を維持する土地利用の役割を検証してきた。また、この成果は毎日新聞や読売新聞記事にも取り上げられている。
 これらの成果は、Biodiversity and Conservation、 Conservation Biology、 Ecography、 Oikosなどの国際誌に発表されてきた。また、和文での論文や書籍も積極的に執筆され、実践活動にも関わることで、応用科学としての生態学の発展に貢献してきた。生態学会でもほとんど毎年話題提供おこない、大会企画委員などの業務も担っており、生態学会の一層の発展に貢献している
 以上の理由から、山浦悠一氏は日本生態学会宮地賞の受賞者として相応しいと判断する。

選考委員会メンバー:粕谷英一,酒井章子,綿貫豊,大手信人,佐竹暁子,正木隆(委員長),大園享司,中野伸一,野田隆史

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