日本生態学会

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第19回(2014年) 日本生態学会宮地賞受賞者

小池 伸介(東京農工大学大学院農学研究院)
高橋 佑磨(東北大学学際科学フロンティア研究所)
細 将貴(京都大学白眉センター)


選定理由

小池伸介氏
 小池伸介氏は、行動範囲が広く生息密度の低い食肉目と長命な樹木という、研究を進めるうえで極めて厄介な特徴を持つ相互作用系を対象に実証研究を進めてきた。野外での採食行動や結実状況の観察、野外操作実験及び飼育個体への給餌実験を効果的に組み合わせることで、ナラ類等の堅果生産量の年変動に応じてツキノワグマの食性や行動が変化することでサクラ類やミズキ等の液果類種子の散布量と散布距離が大きく年変動することを見出した。特筆すべき発見は、これらの液果類種子のクマによる散布距離はナラ類の凶作年には20km以上にも達する可能性を見いだした点である。これは良く知られている鳥類による種子散布と比べると極めて長距離であることから、クマなどの食肉目動物による種子散布が樹木のメタ群集の維持に大きく関与していることを示唆している。またシカ・食糞性コガネムシ・ツキノワグマの三者間の相互作用についての研究からは、森林生態系の保全と再生の鍵となる視点を提供した。これら研究成果は国際誌に45本の論文として掲載され、総被引用回数は140回以上に達する。生態学会においても数多くの発表を行ってきたほか、企画集会の企画などを通して生態学会の発展にも積極的に貢献している。
 以上の理由により、小池伸介氏は日本生態学会宮地賞の受賞者として相応しいと判断する。

高橋佑磨氏
 高橋佑磨氏は、イトトンボ類を主な材料とし、「遺伝的多様性の維持機構や空間変異の成立機構、および遺伝的多様性の進化の生態的帰結」の実証に取り組んできた。雌に遺伝的な2型を生じるアオモンイトトンボの長期・広域にわたるフィールドワークや行動実験、形態観察に基づく多角的な検証を行ない、1)頻度依存選択により遺伝的多様性が維持されることを実証し、2)雄の頻度依存的な配偶者探索により、2型の維持や2型の比率の周期変動がもたらされることを理論的・実証的に明らかにし、3)雌の中に複数の色彩型がバランスよく混在するほど、雄からのセクシャルハラスメントのリスクが分散され、集団の増殖率や安定性が高まることを明らかにした。
 以上の成果は、Animal Behaviour、Evolution、Heredity、Nature Communications などの国際誌に発表された。生態学会でも毎年発表を行い、全国大会企画集会や地区会公開シンポジウムの企画、生態学会誌での総説の執筆など生態学会の発展に貢献している。
 このように、野外調査や行動実験、形態観察、集団遺伝学的解析、数理モデルなどの手法を組み合わせることで、学習行動や発生応答といった行動/生理的要因と、生態的/進化的動態などのマクロな生物学的動態を結びつけ、独創性の高い研究成果を上げている。
 以上の理由により、高橋佑磨氏は日本生態学会宮地賞の受賞者として相応しいと判断する。

細将貴氏
 細将貴氏は、カタツムリ食ヘビとカタツムリの左右性を主な題材に、捕食者・被食者の進化と種分化について実証研究を行ってきた。標本調査・飼育実験・文献調査・分子系統解析などの多様な方法を有効に組み合わせて得られた描像は、生物間の相互作用がユニークな方法で進化や種分化を駆動する好例であり、学術的に重要であるばかりでなく、非常に心惹かれる。細氏は、まず(1)標本調査によってカタツムリ食ヘビの顎構造に見られる顕著な左右非対称性を指摘した上で、捕食実験によって右巻きのカタツムリの方が左向きのものよりも効率よく利用されることを見いだした。さらに(2)巻貝の殻形がカタツムリ食ヘビへの捕食防御になりうること、ヘビの存在がその進化の鍵を握ることを示唆した上で、実際に(3)カタツムリにおいてはヘビの存在が巻き方向の逆転という単純な種分化の様式を促進することを文献調査と分子系統解析によって明らかにした。この他にも、(4)ヘビの分布しない海洋島においては左右性の逆転に起因する非適応的種分化が生じやすいこと、(5)成長段階に応じてカタツムリの天敵への防御方法が変化することなど、多くの興味深い研究成果を発表されてきた。これらの研究成果は、Proceedings of Royal Society B、Nature Communications、American Naturalist、Biology Letters等に9報掲載されている。生態学会においても多くの発表を行ってきたほか、一般書の執筆や講演等を通じて生態学の面白さを精力的に広く伝えてきたことも高く評価される。
 以上の理由により、細将貴氏は、日本生態学会宮地賞の受賞者として相応しいと判断する。

選考委員会メンバー:大手信人,佐竹暁子,正木隆,大園享司,中野伸一,野田隆史(委員長),工藤洋,近藤倫生,松浦健二

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