日本生態学会

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第21回(2017年) 日本生態学会宮地賞受賞者

石川 尚人(海洋研究開発機構 生物地球化学研究分野)
入江 貴博(東京大学 大気海洋研究所)
大澤 剛士(農研機構 農業環境変動研究センター)
吉原 佑(三重大学 生物資源学研究科)

日本生態学会宮地賞には6名の自薦・他薦があった。これまでの研究業績や研究活動の主体性等を総合的に評価して、特に優れていた石川尚人氏、入江貴博氏、大澤剛士氏、吉原佑氏、を受賞候補者として選定したことを報告する。

選定理由

石川尚人 氏
石川尚人氏は、これまで安定同位体比などを用いて,特に河川における食物網研究を行なってきた。食物網解析において,これまで広く利用されてきた炭素・窒素安定同位体比分析は,物質循環のそれぞれの過程が見えないことや,時間的な評価ができないことなどが問題であった。それを解決する手法として,時間軸の指標となる放射性炭素天然存在比,アミノ酸とクロロフィルの同位体比など最新の分析化学を駆使して研究を進めてきた。特筆すべき成果としては,生物が生産者を介し,現世の大気CO2だけでなく最大で数千年前の炭素を利用していることを発見したこと,アミノ酸同位体比による詳細な食物網解析を河川食物網の解析に導入し,それを基にした「群集平均栄養段階」という指標を新たに提案したこと,河床に付着する底生藻類の炭素安定同位体比についてメタ解析することで,藻類の炭素安定同位体比決定のメカニズムの一般性について明らかにしたこと,などがあげられる。これらの研究成果は,Ecology, Oecologia, Radiocarbonなどの国際誌に10編の学術論文として掲載され,総引用回数は114回に達する。生態学会においても,連年,数多くの発表を行ってきたほか,企画集会を企画し生態学会誌での特集号の出版するなど,成果を活発に発信している。以上の理由により、石川尚人氏は日本生態学会宮地賞の受賞者として相応しいと判断する。

入江貴博 氏
入江貴博氏は、高校生の頃から研究を続けているタカラガイなどの海洋生物を対象に、形態形質の地理的変異や生活史スケジュールを、野外調査・飼育実験などの実証と数理モデルによる理論を組み合わせて研究し、より深い理解を伴う重要な研究成果を挙げてきた。タカラガイの貝殻サイズに見られる地理的変異が生息環境の海水温と関係していること、殻をもつ軟体動物では防御器官である殻と軟体部の成長スケジュールに多様性が見られ、その多様性が環境条件の差異に応じて進化しうること、海洋で大規模なブルームをつくる円石藻は炭酸カルシウムの外骨格をもつが、海洋酸性化に対して外骨格石灰化の進化的応答が見られることの解明が、主な研究成果である。これらの研究成果は、American Naturalist, Marine Ecology Progress Series, PLoS Oneなどの国際誌に20報、和文誌などに6報として公表されている。また、大会においてシンポジウムなどの集会を積極的に企画するなど、生態学会での活躍も大きい。以上の理由により、入江貴博氏は、日本生態学会宮地賞の受賞者として相応しいと判断する。

大澤剛士 氏
大澤剛士氏は、巨大データベースの解析を基とした保全生態学研究に先駆的に取り組んできた。生物の分布と土地利用など日本全国の長期的にとられたデータを活用することで、時空間的に広がりをもった研究が可能となる。生物多様性の維持と人間活動との関わりについて、様々な事例を対象に日本全国スケールで実証していることは高く評価できる。また、社会的課題に対し、他分野と積極的に共同研究を行い取り組む姿勢も、これまでの成果を特徴づけている。これらの研究成果は41編の学術論文として掲載され、総被引用回数は190回以上に達する。生態学会誌、保全生態学、Ecological Research誌それぞれに5報位上論文を発表し、生態学会において企画集会やシンポジウムを開催するなど積極的に参加している。日本生態学会誌編集委員や電子情報委員や大会企画委員、理事など学会の各種委員に携わっており、学会の活性化に貢献している。以上の理由により、大澤剛士氏は、日本生態学会宮地賞の受賞者として相応しいと判断する。

吉原佑 氏
吉原佑氏は草原をフィールドに多角的に研究を展開している。これまでに、1)家畜放牧による草原の生物多様性、生態系機能への影響、2)げっ歯類による攪乱が引き起こす土壌や植物の不均一性、3)劣化した草原生態系における家畜放牧、げっ歯類、火入れによる修復、4)GIS解析、遺伝解析を用いた野生馬の保全、の研究がある。また、近年では生物多様性、生態系機能と生態系サービスの関係の解明、特に土壌栄養塩類と糞虫、植物の種多様性と家畜、植物の種多様性とリター分解速度の研究に取り組んでいる。
 吉原佑氏の研究成果は、これまでに原著論文37本、著書も3本と数多く発表されている。注目すべき点は、それらの研究成果が生態学分野にとどまらず、草地学、畜産学、環境科学、土壌学においても評価されており、Oecologia, Applied Soil Ecology, Biological Conservation, Ecological Engineering, Animal Feed Science and Technology等、多岐にわたる一流国際誌に発表されており、それらの引用回数は計280以上に達する。また、生態学会においても連年、発表を行っている。以上より、吉原祐氏は、日本生態学会宮地賞の受賞者として相当すると判断する。

選考委員会メンバー:工藤洋,近藤倫生,松浦健二,鏡味麻衣子,日浦勉(委員長),吉田丈人、岸田治、塩尻かおり、土居秀幸

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