日本生態学会

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第21回(2017年) 日本生態学会宮地賞受賞者

潮 雅之(科学技術振興機構/京都大学生態学研究センター)
小林 真(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)
鈴木 俊貴(京都大学生態学研究センター)


日本生態学会宮地賞には5名の自薦・他薦があった。これまでの研究業績を特に生態学分野の功績を重視して評価するとともに、研究活動の主体性や学会への貢献等も総合的に評価し、特に優れていた潮雅之氏、小林真氏、鈴木俊貴氏を受賞候補者として選定したことを報告する。

選定理由

潮 雅之 氏
潮雅之氏は、ボルネオ島の熱帯雨林をフィールドに、植物—土壌フィードバックループが針葉樹と広葉樹の長期共存の重要なメカニズムであることを実証的に明らかにしてきた。樹種によってタンニン含量が異なることに注目し、微生物群集の活性や栄養塩の無機化を介して、実生の成長や死亡に影響がフィードバックすることを実証した成果は注目に値する。特筆すべき点は、長期データ解析に加え、安定同位体標識など地球化学的手法や次世代シークエンス解析など最新技術を組み合わせたアプローチにより重厚で説得力のあるデータを集積し議論している点である。これらの成果はEcological Monograph誌をはじめ、Functional Ecology誌など一流の国際誌に掲載された。他にも、環境DNA や時系列解析を用いた動物群集の相互作用研究も精力的に進めている。数理生態学者や水域の生態学者との共同研究でも成果をあげており、これまでの総被引用回数は490回以上に達する。日本生態学会では、大会においてシンポジウムや集会、英語口頭発表などで数多くの発表を行ってきたことに加え、日本生態学会誌や Ecological Research誌に総説を発表するなど、活躍も大きい。以上より、潮雅之氏は日本生態学会宮地賞の受賞者として相応しいと判断する。

小林真 氏
小林真氏は、北方圏の植物群集の撹乱や気候要因への応答に注目する研究に取り組んできた。ツンドラや冷帯針葉樹林などへの気候温暖化の影響は大変大きい。しかし、これらの気候変動への応答を的確に理解するには、火災なども含めた撹乱、土壌微生物と植物の相互関係、植生遷移の方向性や速度、など様々な生態学的要因を考慮する必要がある。小林氏は国内外の研究者と共同で、これらのプロセスについて 新たな側面を明らかにしてきた。例えば、ツンドラにおける植生遷移における種子の分散制限の程度や、山火事で生成される土壌中の炭がリンを吸着して北方林の二次遷移を制限する程度などを野外実験によって検証している。これらの成果は、Plant and Soil誌、Ecological Research誌、The American Naturalist誌、Soil Biology and Biogeochemistry誌、Polar Research誌、Biology and Fertility of Soils誌などの国際誌に約40報の論文として報告され、その引用総数は400回に達する。また、小林氏は、 生態学会に毎年参加し、大会運営委員、招待講演者、シンポジウム、企画集会、自由集会の企画者として、学会の活性化に積極的に貢献してきた。以上の理由より、小林真氏は、日本生態学会宮地賞の受賞者として相応しいと判断する。

鈴木俊貴 氏
鈴木俊貴氏は鳥類の鳴き声による種間・種内コミュニケーションを研究してきた。鈴木氏はシジュウカラ科鳥類の鳴き声の適応的意義を明らかにした研究で2014年に日本生態学会奨励賞(鈴木賞)を受賞したが、その後研究を大きく飛躍させ、シジュウカラが個別の鳴き声だけでなく、それらを組み合わせて文章化することで、他個体とコミュニケーションしていることを突き止めた。具体的には、警戒を促す鳴き声と集合を促す鳴き声がこの順で組み合わさった場合に、聞き手の個体が「警戒しながら集合する」ことを確かめ、シジュウカラの音列には文法規則があることを示した。さらには、シジュウカラが同様の文法規則であれば、鳴き声の組み合わせとしては初めて聞く音列であってもその意味を理解できることも発見した。これらの研究は、ヒトにおいてのみ進化したと考えられてきた情報規則としての文法が、他の動物でも用いられていることを初めて実証したものであり、鳥類の協力行動の生態と進化はもちろんヒトの言語進化に関する今後の研究にも影響を与えることが期待される。一連の成果は、Scientific Report誌、Nature Communications誌、Current Biology誌、Animal Behaviour誌など一流の国際誌に22編の論文として公表されており、総引用回数は300回に達する。研究の多くが国内、国外問わずさまざまなメディアで紹介され、生態学の普及啓発や日本の生態学研究のアピールにも大きく貢献している。以上の理由から、鈴木俊貴氏は日本生態学会宮地賞の受賞者として相応しいと判断する。

選考委員会メンバー:岸田治(選考委員長)、鏡味麻衣子、日浦勉、吉田丈人、塩尻かおり、土居秀幸、井鷺裕司、北島薫、東樹宏和

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