日本生態学会

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第7回(2014年) 日本生態学会大島賞受賞者

市岡孝朗(京都大学大学院人間・環境学研究科)
久保田康裕(琉球大学理学部)


選考概要

 市岡孝朗氏は、熱帯雨林での特定の調査地を中心とした野外研究を積み重ねてきたという点で、大島賞の趣旨にかなっている。具体的なテーマは共同研究も含まれるためさまざまであるが、アリ植物に関する研究やシリアゲアリによる自らが生息する植物防衛の研究など、アリと植物の関係を含む種間関係が軸になっている点で一貫している。この点では初期のテーマであるカイガラムシを中心とする個体群動態の研究にも共通性がある。
 以上の氏の業績は、60編以上の論文として国際誌に発表され、600回以上引用されていることからも、国際的にも高く評価されていることがわかる。生態学会にも毎年のように参加し、シンポジウムの企画も3回おこない、またEcological Research 編集委員、大会運営委員、生態学会誌編集委員、生態学事典の分担執筆を務め、Ecological Research、生態学会会誌でも論文を発表していることからも、生態学会の発展にも大きく貢献している。
 以上の理由から、市岡孝朗氏は日本生態学会大島賞の受賞者として相応しいと判断する。

 久保田康裕氏は、森林生態系を対象に長期間にわたる毎木調査など地道なフィールドワークを積み重ね、得られたデータをもとに自らシミュレーションモデルを開発、解析することによって、森林群集の形成・維持過程の解明するための研究を推進されてきた。
 氏の研究対象は、北海道の針広混交林から沖縄の亜熱帯常緑広葉樹林まで、幅広い。そして、そのいずれの対象においても、長期の観測によって森林の撹乱体制、個体の成長・死亡率、個体の分布などの情報を、信頼できる精度で推定してきた。そのデータセットに基いて森林構造の形成メカニズムや将来の動態を解明・予測した研究は一見地味ではあるが、その科学的な信頼性は高く評価できる。
 さらに近年は、プロットデータの解析を通じて、森林の種多様性の形成における過去と現在の地理的制約の相対的な役割を解明しようと取り組んでいる。これは、現在の地理情報(例えば大陸からの距離)だけでは説明できない、森林の種多様性パターンの形成過程の解明につながる取り組みであり、世界的にも新規性の高い、インパクトのある成果が期待できる。
 これらの氏の研究成果は、Annals of Botany、 Biodiversity and Conservation、 Ecological Modelling、 Journal of Ecologyなどの国際誌に34編の論文として掲載され、その総引用回数は370回に達する。生態学会にも毎年のように参加し、シンポジウムや企画集会などを6回企画されている。
 以上の理由から、久保田康裕氏は日本生態学会大島賞の受賞者として相応しいと判断する。

選考委員会メンバー:粕谷英一,酒井章子,綿貫豊,大手信人,佐竹暁子,正木隆(委員長),大園享司,中野伸一,野田隆史

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