日本生態学会

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第8回(2015年) 日本生態学会大島賞受賞者

韓 慶民(森林総合研究所北海道支所)
山田 俊弘(広島大学大学院総合科学研究科)


選考概要

 韓慶民氏 は、樹木の個体レベルでの資源量分析を10年間にわたって実施し、樹木における繁殖量の豊凶メカニズムの解明をめざした研究を行ってきた。樹木の種子生産における豊作年は数年に一度しか訪れないため、そのメカニズムを明らかにするには長期間にわたって観測を継続する必要がある。韓氏は主に苗場山のブナ林を調査地とし、枝、繁殖器官、葉における資源量を10年にわたって測定し、得られた重みのあるデータの分析と安定同位体比分析から、種子生産には貯蔵炭素はほとんど使われていないことを実証し、豊凶には炭素ではなく窒素資源の影響が強い可能性を指摘した。また、二酸化炭素添加実験を通して、二酸化炭素が高濃度な環境下では繁殖と成長への資源配分が大きく変化する可能性も指摘している。これらの研究は、Oecologia, Annals of Botany, Tree Physiology, Plant Cell and Environmentなどの国際誌に24本の論文として掲載され、植物の整理生態生理学の発展に大きく貢献してきた。生態学会にも毎年のように参加し、20回を超える学会発表を行っている。
 以上の理由により、韓慶民氏は日本生態学会大島賞の受賞者として相応しいと判断する。

 山田俊弘氏 は、23年間一貫して熱帯林の長期観察に基づく生態学的な研究を行ってきた。特筆すべき点は個体群統計学的解析を行う上で十分なサンプル数を集めにくい熱帯林の樹種を対象に、環境条件と個体群動態の関係の解明に対して世界に先駆けて取り組んだことである。例えば、東南アジアでは地形に対応した個体群動態に種差が不明瞭であることを明らかにした。この発見は地形に応じた樹木の分布の形成機構として従来有望視点されてきた仮説の一つを棄却するものであり、その後の研究の展開に繋がっている。また、熱帯林における伐採の生態学帰結の解明にも取り組み、伐採が熱帯林の動態と生物多様性におよぼす影響を明らかにした。これらの研究はOecologia, Journal of Ecology, Ecosphere, Journal of Vegetation Science, Forest Ecology and Managementなどの国際誌に23本の論文として掲載されており、その総被引用回数は290回を超える。また、生態学会においても数多くの発表を行ってきたほか、数多くのシンポジウムの企画、さらに、和文誌編集委員、生態系管理委員などを通して学会の発展にも積極的に貢献している。
 以上の理由により、山田俊弘氏は日本生態学会大島賞の受賞者として相応しいと判断する。

選考委員会メンバー:大手信人,佐竹暁子,正木隆,大園享司,中野伸一,野田隆史(委員長),工藤洋,近藤倫生,松浦健二

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