日本生態学会

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第14回(2021年) 日本生態学会大島賞受賞者

大橋 瑞江(兵庫県立大学環境人間学部)


1名の他薦による応募があった。応募者はフィールドを中心とする森林地下部の炭素循環の研究を継続して行なっており、大島賞の趣旨と合致しているとの判断がなされた。研究業績の量・質ともに高く、森林生態学の分野で先導性がある研究を行ってきていることが高く評価され、全会一致で大橋 瑞江氏を選出することになった。

選考理由

大橋 瑞江氏
大橋氏はこれまで一貫して、フィールドを中心とする森林地下部の炭素循環の研究を行ってきた。1995年から8年間にわたりスギ人工林の土壌呼吸を定量化し、温室効果ガスとして重要な二酸化炭素の土壌中の動態を明らかにした研究は、国内研究の先駆けとなった。その際には携帯型測器を自ら開発するなど、多角的な挑戦を行ってきた。また大橋氏はボルネオ島(マレーシア・ランビルヒルズ)における熱帯雨林の土壌呼吸の特性、土壌動物等との関係等にかかるフィールド研究を継続している。この中では、熱帯林土壌の炭素動態の複雑さを知らしめる研究成果を多数発信してきた。より大規模なサンプリングによって、高い炭素フラックスが認められるスポットが出現することを見出すなど、国際的にも評価の高い実績をあげている。さらにヨーロッパ北方域でも研究活動を展開しており、2003年から2011年までの8年間にわたって、フィンランド北方林におけるアリ塚を介した物質循環の国際プロジェクトに参加した。このプロジェクトにおいて、アリ塚の分布や構造が北方林土壌からの炭素フラックスにもたらす影響を世界で初めて評価したほか、アリの個体数密度等が炭素フラックスに影響することを示し、北方林の生物相と土壌圏の炭素動態について多くの新しい知見を見出した。根系研究の新手法の開発にも精力的に取り組んでいる。生態学会におけるシンポジウムの企画、トレーニングの開催など後進の育成にも積極的に取り組んでいる。以上から、大橋 氏は、フィールドワークに基づく生態学の発展に寄与し、大島賞の受賞にふさわしいと評価する。

選考委員会メンバー:内海俊介、岡部貴美子、三木健、佐藤拓哉、辻和希、半場祐子(委員長)、小野田雄介、鏡味麻衣子、佐竹暁子

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