日本生態学会

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第16回(2023年) 日本生態学会大島賞受賞者

辻 大和(石巻専修大学)


選考理由

他薦1名と自薦1名の応募がありました。まずフィールドを中心とした長期研究を自ら実施してきたかどうかという観点、論文実績や研究の新規性をもとに議論を進めた結果、1名は候補者としてふさわしいと判断されると委員の意見が一致しました。一方で、もう1名の候補者については、研究内容が大島賞の趣旨と合致しているものの、論文実績や研究の新規性が他の応募者に及ばないと判断されました。最終的に、辻大和氏が選出されました。

辻 大和 氏
辻大和氏は、食物資源の時空間変動に対する哺乳類とくに霊長類の反応についての研究を基軸とし,種子散布者としての哺乳類の貢献の評価や,果実供給量の時空間変動が哺乳類の種間・種内相互作用に与える影響などについて、多数の論文を発表してきた。霊長類学や哺乳類学の雑誌を中心に,応募時点で英文64報(筆頭41),和文13報(筆頭8)の論文を発表し、計1000回以上の引用を得ている。辻氏は学生時代から,野外における哺乳類の行動モニタリングをベースとする研究に取り組んできた。とくに,種子散布をめぐる哺乳類の種間・種内相互作用について,様々な興味深い成果を報告してきた。主要な成果には,複数の樹種の種子豊凶に対し,群れ内順位の異なるメスザルが異なる反応を示し、その結果として樹木側の種子生存率や散布効率が変化するといった報告や,サル類とシカ類の間で落下種子をめぐる共益関係についての報告などがある。氏の研究活動は国内だけにとどまらず,南アジア~東南アジアにおけるカニクイザルやラングール類などの霊長類についても,長年にわたり研究活動を続けている。長期にわたる地道な野外研究によって,樹木の繁殖生態と哺乳類の行動生態をつなぐ成果をあげてきた点などが,大島賞に相応しいと評価する。

選考委員会メンバー:石川麻乃、大橋瑞江、小野田雄介、鏡味麻衣子、佐竹暁子、鈴木俊貴、鈴木牧、辻かおる、森章(委員長)

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