2017年3月30日

公開講演会

極限環境に棲む生物は、ユニークな形態や生活様式を持ったものが多いですが、それは、厳しい環境を生きる上で効率的な生き方をしていることの現れです。しかし、その生態特性の意味については、一般にはよく理解されていません。また、極限環境では、生物活動は微妙な環境条件のバランスの上で成り立っており、気候変動など大きな環境変化に対して脆弱です。本講演会では、普段は目にすることのない様々な極限環境に暮らす生物の適応様式を一挙に紹介するとともに、それらに忍び寄る気候変動の脅威について紹介し、極限に棲む生物を科学することの魅力と重要性を社会へ伝えたいと考えています。

第21回日本生態学会公開講演会
「極限に棲む生物の生き様 – 身近な生態系の成り立ちを知るヒント」

日時:2018年 3月18日(日)13:00~15:00
会場:札幌コンベンションセンター 特別会議場(http://www.sora-scc.jp/guide/floor_detail/detail2.html
参加費:無料
参加申込み方法:事前の申し込みは不要です。直接会場にお越しください。

プログラム

  1. はじめに:なぜ私たちは極限環境に棲む生物を研究するのか?
    小林 真 (北海道大学)
  2. 鯨が支える深海底のオアシス
    藤原 義弘(海洋研究開発機構)
  3. ペンギンとサメが教えてくれた極地の暮らし方
    渡辺佑基(国立極地研究所)
  4. カビが映し出す北極と南極の極限環境
    大園 享司(同志社大学)
  5. 短い季節で生き延びる高山植物の生存戦略
    工藤 岳(北海道大学)
  6. 生物多様性の役割をモンゴルの草原で考える
    佐々木 雄大(横浜国立大学)

司会 日浦 勉(北海道大学)

講演要旨

鯨が支える深海底のオアシス:藤原義弘(海洋研究開発機構)

深海底は基本的に餌不足の環境ですが、ときに表層からビックリするようなご馳走が届けられます。その一つが鯨の遺骸です。ひとたび鯨が海底に沈むと、腐肉に喰らいつくもの、骨を利用するもの、腐敗した骨から染み出す化学物質を利用するものなど様々な生き方をした生物が集まります。なかには進化の袋小路に迷い込んだような動物も出現し、海洋生物の進化を紐解くヒントを与えてくれます。表層で暮らす鯨が死後に深海底で作り上げる独特な生態系についてご紹介します。

ペンギンとサメが教えてくれた極地の暮らし方:渡辺佑基(国立極地研究所)

極地の動物たちはどのように低温に耐えているのでしょうか。動物の体にビデオカメラや記録計を取り付けるバイオロギングと呼ばれる方法を使い、南極のアデリーペンギン(鳥類)と北極のニシオンデンザメ(魚類)の行動を調べました。その結果、低温に徹底的に抗うアデリーペンギン式の生存戦略と、低温のなすがままになるニシオンデンザメ式の生存戦略とがあることがわかりました。

カビが映し出す北極と南極の極限環境:大園享司(同志社大学)

北極と南極と聞けば、どんな場所をイメージしますか? 北極と南極には、どんな違いがあるでしょうか? 私はこれまで両極を訪ね、地球の片隅とも辺境ともいえる地域に暮らすカビ(菌類)の多様性と生態を調べてきました。カビはタフな生き物ですが、北極や南極にはどんな種類がいるのでしょうか。講演では、フィールドでの比較調査から明らかになった、北極と南極の環境と菌類の生き様について、現地の写真を交えながら紹介します。

短い季節で生き延びる高山植物の生存戦略:工藤岳(北海道大学)

高山帯は低温や強風に加え、生育期間の短さから見ても生物にとって過酷な環境です。世界有数の豪雪地帯にある日本の山岳地域では、雪渓が遅くまで残るため、高山植物はごく短期間のうちに成長と繁殖活動を終えなくては子孫を残すことはできません。このような厳しい環境の中で高山植物は多様な群落を形成し、鮮やかな花を咲かせ、最終氷期以降生き延びてきました。天空の生態系で独特の進化を遂げてきた高山植物の生存戦略について紹介します。

生物多様性の役割をモンゴルの草原で考える:佐々木雄大(横浜国立大学)

生態系において、生物の多様性が果たす役割とはどういったものでしょうか。生物が多様であるほどに、異なる種が互いの機能を補い合ったり、重複した機能を持ったりする可能性の幅が拡がると考えられます。北東・中央アジアの乾燥した地域では、降水量が非常に少ないために樹木は生育できず、イネ科の草本植物を中心とした大草原が広がっています。今回は、この大草原を舞台に、さまざまな生物によって支えられる生態系の働きについて解き明かす試みをご紹介します。

主催:一般社団法人 日本生態学会
後援:札幌市教育委員会
本講演会は、平成29年度文部科学省研究成果促進費の支援により開催されます